代表理事 三浦孝司
郵政民営化法案の参院否決に伴い衆院が解散されました。会期中に審議されておりました障害者自立支援法は廃案となりましたが秋の臨時国会に再提出される事が決定しています。厚生労働省は、臨時国会時でも1割負担については修正案を出さない方針です。
それまでに、当事者自身この法案を勉強し何がいけないのか?何が足りないのかといった声を出す事が大切だと思います。皆さんの生活に大きく影響を及ぼすであろう最大の問題点「応益負担」について考えてみます。
これまでの支援費制度では「応能負担」といって「その人の支払い能力に応じて払ってください」という仕組みで、所得が低い当事者にはほとんど負担はありませんでした。障害者自立支援法案が可決されると、「応益負担」という仕組みに変わります。「応益負担」とは、「収入や支払能力に関係なく、利用に応じて負担してください」って仕組みです。障害が重ければ重いほど利用時間は増える事になりますので、同時に負担額も増える事になります。
一応、障害年金1級・2級受給者や生活保護世帯によって上限額が設定(下記資料参照)されていますが、国籍の問題でその障害者年金すら受給できない方もおられます。年金を受給されている方でも、その金額はほんの僅かで、現在でもギリギリの生活である当事者にこれ以上の負担が増えれば、生活はほんとうに圧迫されます。しかも、公費医療負担(山口県では重度心身障害者医療等)も見直しにより、医療費にも原則1割負担が義務付けられます。
病院とは切っても切れない当事者には、これも大きな負担になることは間違いありません。応益負担にするのなら同時に、障害の重さにあわせて充分な所得保障などの補助をするべきではないかと思います。
そもそも「益」って何でしょうか?その人にとって得になる事とでも言うのでしょうか…。「食事をすること」「着替えをすること」「お風呂に入ること」「トイレに行くこと」が「益」と言えるのでしょうか?これらは、生活において誰しもが必要な日常動作のはずです。それが、障害をもって産まれてきたばかりに、人生の途中で障害を負ったばかりに、動作の1つ1つに値段がつけられる事になります。
これまでの障害者福祉制度を大きく変える内容なのに、新聞やニュースでなかなか話題にされないのはなぜでしょうか?所詮、障害者は一部の人間で一部の人のために巨額の予算はあてられないということなのでしょうか?
現在全国に身体障害者が約352万人、知的障害者が約46万人、精神障害者が約259万人いると言われています。国民のおよそ5%が何らかの障害をもっている事になります。障害者の数は、高齢化同様に事故や病気で年々増えています。
国民の誰しもが「病気や事故で障害を負うこと」はあり得ることですし、「年を取ること」は当然のことです。ですが「障害を負いたくない」とか「年を取りたくない」と考えている方が多いのではないでしょうか?なぜ、そう思うのか…。それは、障害を負った時、年を取った時に安心して使える制度や環境が備わっていないからでしょう。
「障害を負ったとき」「年を取ったとき」気がついたら当たり前の生活が出来ない制度や環境になっていたということのないよう、(今まさに障害者の生活はそうなろうとしている!)多くの方に一緒に考えて頂きたいと思います。せめてどんな法律になるのかという事だけでも注目していただけたら幸いに思います。
最後に、言葉は悪いですが、これまで当事者の多くは『良い子』であることを演じる人が多かったように思えます。しかし、これからは行政が決めることに不満がある場合には、どんどん口に出していきましょう。大人しくしていたら自分自身の生活が守られなくなってしまいます。本当にそうなのですよ。今こそ、一人一人それぞれが何が必要なのか考えていくべきではないでしょうか?
月額上限額の設定は住民基本台帳の世帯の所得で設定され、利用者本人の属する世帯の収入などに応じて以下の4区分に分かれます。
成人障害者の場合は親や兄弟を扶養義務者から外す事で合意されたようです。但し、扶養義務者が所得税の障害者控除を使わない事、健康保険制度において同一世帯に属する親兄弟、子供などの被扶養者となっていないことが条件となります。
『どりーむ』から毎月発送しています『受領書』に記載されている金額の1割が、およその負担金額になると思われます。負担金は、居宅・通所・入所・作業所・グループホーム等、当事者が受けるサービスすべてに摘要されます。